聖川真斗「日々精進~聖川手記~」

ラジオ実習

早乙女学園はアイドル養成校というだけあって
実践的な実習が多い。
それは覚悟の上だったのだが……。

昨日いきなり、学園長先生に呼び出されて、
まさか、いきなりラジオ実習をやれとは……。

アドリブはあまり得意ではないのだが……。
可能な限り、小粋なトークというものを心がけよう。

相方の来栖は、見た目は幼いが
中身は、かなりしっかりした常識人だからな。
うまくやっていけると思う。

しかし、油断は禁物だ!
ここはひとつ、ネタをしっかり仕込んで、
どんな状況にも対応できるようにしておかねばなるまい。

そう思い、先程購買で
参考になりそうな本を購入してきた。

『正しいラジオ番組の作り方』
『実録! 放送作家への道』
『すべり知らずのトーク集』
『DJに大切な10の法則』
『ツッコミを追い詰める鬼畜ボケ ベスト100』
『本当に言った恥ずかしい台詞』
『無茶ぶりのススメ!』

これらを熟読した上、
本番前までにあらゆることを想定し、
ネタを仕込み、万全を期すとしよう!

衛生面に考慮して

この時期は気温も高く、湿度も高い。
食中毒には十分注意して調理しなければいかんな。

実は明日、2名ほど誕生日の奴がいるのだ。
それで、そのうちのひとりが自ら調理しよう
材料を山程購入していてな。

自分の誕生日なのだから、お前は何もするなと告げ、
調理をかって出た。
放課後、すぐに始められるよう、
今から下準備をするのだが……。

さすが四ノ宮……。
どう料理していいのかわからん食材がちらほらと……。
なんだこの蛍光色のゲル状の物体は……。
しかし、ここで負けるわけにはいかん。
俺なりに最高の料理を作りださなければ……。

それに、今回調理するのは俺だけではない。
女性も手伝ってくれているからな。
彼女ならば、繊細で深みのある味を作りだせるだろう。

テストが終わったばかりで
皆、羽目を外したがっているからな。

明日の誕生会はうってつけのイベントだ。
はりきって準備にとりかかろうではないか。

春の陽気に誘われて……

最近はずいぶんと暖かくなってきたな。
学園内でも、ちらほらと花が咲いているのを見かける。

この時期の花はいい。
見ているだけで気持ちが前向きになる。

花といえば……連休中に見た花畑は壮観だったな。
また、近いうちに見に行きたいものだ。

先日、俺は一十木に誘われて
皆で裏山へ遊びに行ったのだ。
様子は他のメンバーもブログで書いているが、
本当に天気に恵まれ、美しい花々が咲いていた。

春の花はみな美しいが、その中でも俺は
小さくとも、けなげに咲いている
スミレに心惹かれるな。

決して目立たず、けれど鮮やかに咲く
その姿は美しい。

そういえば……。
ハイキングの時にもひとりいたな。
けなげに働く、美しき花が……。

昼までは、こまごまと動き、
一生懸命、皆に給仕していたが……。
ようやく手が空き、気がねなく楽しめるようになったら、
疲れて眠ってしまったようだ。

それでは本末転倒だと思ったが、
当の本人は満足気な顔で眠っていたな。

次回、このような会を催すことになったら、
思い切りもてなしてやりたいものだ。

気温の差

4月も残り少なくなってきたな。
新しい環境には慣れてきても、この気温差に慣れるのは
なかなか難しいかもしれない。

一体いつまでこのような状態が続くのか……。
夏のように暑くなったかと思えば
冬のように寒い。

これでは体調管理もおぼつかないだろう。
ただでさえ、この時期は不慣れなことも多く、
心身ともに緊張状態の者が多いだろうに……。

そこへ、身体のストレスまでかかるとなると、
五月病になってしまわないか少々心配だな。
皆は大丈夫だろうか……。

身近な人間にも、頑張りすぎてしまう者がいてな。
無理をして倒れなければ良いのだが……。

休み期間中も小まめに連絡を取り合い、
気にかけておいた方がいいだろう。

しかし、何の理由もなく
メールや電話を入れるわけには……。
人間関係とは難しいものだな。

雪と桜

一十木もブログで書いていたが、
先週末、夜半から降り出した雨は明け方には雪に変わっていた。
けれどその雪は朝には雨に戻っていたのだ。

もし、一十木が知らせてくれなければ
俺はあの雪を見ることはできなかったかもしれない。

ちょうど実習があったので、土曜日は登校したのだが、
その頃にはもう雨だったな。

関東圏でこの季節に雪が降るのは非常に珍しいことらしい。
まだ少しだけ残る桜……そして雪……。
桜と雪を同時に見られることなど稀だろう。
俺は奇跡を目撃したのかもしれないな。

人生に奇跡的な出逢いが、いくつあるのかはわからない。
けれど、それは確かに存在し、その者の行く末を左右する。

そういえば、俺がアイドルを目指そうと決めたのも
こんな雪の日だったな……。

俺は雪に導かれているのかもしれない。
そして、それはおそらく、とても幸運なことなのだろう。

久しぶりのブログだというのに、
少々しんみりしてしまったな。
けれど……。
あの出来事はどうしても文章で残しておきたかったのだ。

即興

最近、実習系の授業が多いのだが、
本日の演技の授業は、少々ユニークだった。

架空のボールを投げあい、キャッチボールをしている演技などは
殆ど台詞を使わずとも動作のみで表現でき、
互いの呼吸を合わせることができておもしろかったな。

どうやらこのキャッチボール演技は、
アドリブ力をつけるのに効果的らしい。
確かに、このキャッチボールには筋書きなどなく、
相手の反応を見てこちらもその場で動くからな。
いい訓練になるだろう。

演劇には子供の頃から興味があり、
演技は好きなのだが……。
俺はどうもアドリブは苦手でな……。

台詞の意味を解釈し、行間を読み、
登場人物の心情を汲み取ることはできるのだが……。

その場で台詞を考え出すというのは難しいものだ。

四ノ宮と逆だな。
俺は言うべき言葉さえ決まっていれば
間を読んで台詞を言うことはできるのだが……。
的確な言葉を瞬時に選び出すまでに時間がかかるのだ。

しかし、苦手だからといって避けて通るわけにはいかん。
なんとか、次の実習までに上手くなっておかなければ。

好敵手

同室のライバルというと神宮寺のことだな。
ただでさえ、家同士もライバル関係にあるというのに、
早乙女学園に来てまでライバルとは……。
つくづく因縁深いものだ。

神宮寺はそうだな……。
まず、あの服装からなんとかした方がいいだろう。
本人はファッションと言っているが、
あのように制服を着崩すのはどうかと思う。

あと、むやみやたらに女性を部屋に招きいれようとするのも
風紀を乱すので、できればやめてもらいたいものだ。

寝起きが悪いのもいただけない。
一体、何個目覚まし時計を置けば気が済むのか。

最終的にはすべて自分で止めてしまい、
結局、俺が起こすことになる。
だから早く寝ろといつも言っているのに……。

ひとり部屋ではないのだから
最低限のルールは守ってもらいたいものだ。

春色

徐々に暖かい日も増え、
真冬の寒さが和らいできたように思う。

そろそろコートもいらなくなってくる頃なのかもしれんな。
……とはいえ、まだまだ肌寒い。

そんな折、店で春色の毛糸を見つけた。
この色はこれからの時期映えるだろう。
カーディガンなら使い勝手がいいだろうか……。

先月の礼もせねばと思っていたことだし、ちょうどいい。
今から作り始めるとしよう。

桃の節句

ひなまつりとは女子のすこやかな成長を祈る祭であって
主役はあくまでも女子であり、
我々が馬鹿騒ぎをしていいものではない。

とはいえ……。
一十木の企画したリアルおひなさまとやらは
なかなか興味深かったのでな。
衣装についての相談をされた時、快く引き受けた。

参加していた女子も、とても楽しそうにしていたし、
細部までこだわって、衣装に手を加えた甲斐があったというものだ。

くじ引きの結果、俺は左大臣に決まった。
位が高いのは光栄なことだが……。

左大臣はその……少々年がいっているのでな。
リアルを追求したら仮装のようになってしまった。

白髪の老人……。
あれが数十年後の自分の姿なのかもしれないと思うと、
なにやら複雑な気分になった。

数十年後、俺はどこで何をしているのだろう。
誇れる自分になっているのだろうか。
……そうありたいものだな。

ユニゾン

誰かと声を合わせ、歌う。
それはとても難しいことだ。

例えそれが信頼している友であったとしても、
完璧に相手を把握しているわけではないし、
まして普段から、理論よりも感情で生きている一十木や
感性が違いすぎて、何を考えているのかまったく読めない四ノ宮と
心をひとつにし、声を合わせなければならないのだ。

おそらく並大抵のことではあるまい。

にも関わらず、
あのふたりは、まったくもってその大変さを理解していない。

むしろ状況を楽しんでいるというか、
単純に歌うのが楽しくて仕方がないといった感じだ。

これは、俺がなんとかするしかあるまい。
そう気負っていたのだが……。

四ノ宮は天性のセンスのよさで、ここぞというポイントをおさえてくるし、
一十木は一十木で、生まれ持った勘の良さから
上手く四ノ宮に合わせてくる。

これなら、俺がふたりに合わせさえすれば、何も言わずとも
まとまりのある歌になるだろう。

わかっているようで
本当にあのふたりを理解していなかったのは
俺の方かもしれないな。

歌を通して友の新たな面をみることができるとは……。
どうやら今回の課題は俺にとって得る物が多そうだ。